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あたいをあたいにして僕を僕にした人

「…入試かー」
「あ?乳児がどうしたって?」
「帰れ」

Tile…あの日の僕、今日の僕、未来の僕…
「入試だよ入試!入学試験!」
「あー、就学時検診のことねー」
「ちげーよ!ていうかもう原型止めてないし!」
ナギたんは何が気に食わないのか大きな声を上げて僕に噛み付いてくる。なんか変なこと言ったカナー?

…ま、わざとだけど。

「はぁ…入試がどうかしたの?私立なら再来週だけど」
僕はいつものように、どうでもよさそうな顔とどうでもよさそう声で聞いてみる、たまにジト目うざいって言われるけど気にしない。
「ふん、別に深い意味はないのだ、ただなんとなくだ」
ナギたんはナギたんで「いちいち文句言うなバーカ」と言いたげな目で返してくる、なるほど、これがジト目うざいか。
「お前と出会った頃はまだ小っちゃくて可愛らしかったなーって思ってな」
「あー、まあ、あの頃はお互い小さかったからねー」
今も小さいけど。
「…何時の間にか中学生になってて、気付けばもう高校入試、時は経つのが速いのだ」
「そーだねー」

…思えば、僕がこの可愛らしいナギたんと出会って、そろそろ5年になる。
あの日見た夢の女性から「死ね」と言われて時は正直びっくりしたね、いま思えばほわほわした顔でなんて酷い事言うのやら。
ま、結果としてナギたんに出会えたのだから、良しとするかな。

「…なぁ、せーな」
「ん?何?」
相変わらずナギたんの表情は変わらない。
「お前って私に会う前ってどんな生活してたのだ?あんまり聞いたことないけど」
そういえばあまり話した事がなかったな。
思い出もなければ紹介したくなるような旧友も居ないから話す気もなかったし。
「…聞きたい?」
「聞きたい!」
大きな声を上げて寄ってくるナギたんは元気に満ちている。可愛い、近くに居ると改めて思うが、今でも小さい。
「そうだなー…うーん…」
そう言って僕は、ほとんど消えかかっている特に思い出したくもない昔の記憶を掘り返し、その中から1つ、というか唯一とも言える出来事を思い出した…


あれは、丁度例の夢を見た半年くらい前かな。
僕は同時最新型ゲーム機であったWiiを持っているにも関わらず、毎日ゲームキューブで遊んでいたのをよく覚えてるよ。


「…それだけ?」
「まあもう少し聞いてて」


あの頃の僕は異常に友達が少なくて、あの頃から既に家族と話す機会も減ってきていて、誰とも喋らないで終わる日も稀ではなかった。
まだ深夜アニメとかも見たことなかったし、パソコンも触ったことがなかったと思う。
そんなある日、小学生5年生の春だったかな。ある一枚のチラシを見つけた。

…小学生スポーツ少年団の募集用紙だ。


「スポーツ少年団?なにそれ?」
「ggrks」


いまでもハッキリと覚えているよ、ずらーっといろんなスポーツの名前が書いてあって、左の方に何々人募集って書いてあるんだ、中央の方にいろんな備考とか書いてあった。
本当は毎年配られてるのだが、僕は運動神経が良くない上に、最初からそんなものに興味もなかったから特に見ていなかった。
でもその年は、他とは全く雰囲気の違う団体の名前が書いてあった。


「なになに?弓道とか?」
「全然違う、ナギたんにはほどんど言ったことないからたぶん分からないと思うよ」
「えー、いじわるー」


それがなんとなーく気になった僕は、珍しく自分から母親に話しかけたのであった。
母に「あのさー、今日スポーツ少年団のチラシ貰ったんだけどさー」って言ったら母はオバケでも見たような顔で「スポーツ少年団…?」と、僕が話しかけたという事実とその内容の両方に驚いてる感じだった。
しかし母も、僕がただなんとなく聞いていると分かると、途端にどうでもよさそうな顔でどうでもよさそうな声で話し出した。いま思えば僕はこの母に似たのかもしれない。
母曰く、なにやらそれをやってる人が母の友人に居るらしく、しかもその人の子供は僕と同じクラスらしい。名前を聞くと全く知らない人だった。
母に「気になるなら一回話聞いてみなさいよ、母さんも詳しくは知らないから」と言われ、自分でも何故か分からないけど、明日その子に話を聞いてみようという気になっていた。


「お前にしては珍しいな」
ナギたんは結構驚いているようだ、可愛い。
「いやー、その辺は全く覚えてないんだよねー」
「私が最初にお前に会った時もかなり荒れてたのに…」


そして次の日、当時休み時間でも教室にいて、周りからかなり決別していたはずの僕はさっそく話を聞こうと動き出していた。
クラスメイトたちは僕が立ち上がった途端に何人か驚いた様子だったが、自分は関係ないと分かると、みんな元の遊びなどに戻っていた、一名を除いてな。
…僕が昨日、名前を聞いてきたその子の存在自体は知っていた。
クラスの最前列の1番右端の席に座っているその子は、僕ほどではないが割と休み時間でも教室にいたからよく見かけていたのだ。
よく絵を描いていたその子はその日も絵を描いていた。後にその絵が原因で色々あったが、それはまた別の話、今日は昨日見たあの団体の話を聞きたいのだ。

昨日僕が聞いた名前は実は女の子だった。
肩のそばまで伸ばした髪、大きめの肩幅、立ち上がれば腰に手を当て仁王立ち、しかも爆竹みたいな性格との噂だ、極め付けはいま思えばナギたんより凄く恐ろしいツリ目。
「…なに、なんか用」
初対面のクラスメイトにもその態度は変わらない。

…昨日僕が目にした団体名、それは少林寺拳法だった。
格闘技というモノは唯一ゲーム以外の僕の興味があるモノだった。
ドラゴンボールとかなら僕も好きだったし、なにより当時は格ゲーなんかもよくやっていたからだ。
あの頃は少林サッカーとか流行ってたからこの名前には何か引かれるものがあった。
しかも女の子でやってる子が居ると聞いたものだ、僕でも出来るかもしれない。

「同級生の女の子なんかよりこの俺が劣っているはずない」ってな。

「…少林寺拳法」
「は?」
「…少林寺拳法、やってるらしいな」
相手がこの態度なら僕も素を出せる。
人の顔と性格は比例するという、だから当時の僕はきっと今よりキツイ顔だったと思う。
「…ほう、興味あるか?」
「ああ、俺も暇なんでな」
…僕はその時、2年振りくらいに他人に笑顔を見せたと思う。そして奴も
「…よろしい!今度の木曜日!道場を見学しにきな!」
…久しぶりに他人の笑顔を見た気がするね。それも僕に向けた笑顔だ。そう、5年振りくらいにな…


「…は?は!?はぁ!?!?」
「ん?なんか変だった?」
「いやいやいやいやいや!お前少林寺拳法やってるとか聞いてないし!そんな変な出会い方した女の話も知らないし!なにより5年振りに笑顔見たってどういうことだよ!」
なんて騒がしい子なんだナギたんは、
「少林寺の話したことないし、あいつの事ナギたん知ってるし、5年振りの笑顔は5年振りの笑顔だし」
「年中無休笑顔みたいなお前が!?2年振りくらいに他人に笑顔見せて5年振りくらいに笑顔見るってどんな状態だよ!…て、え?私も知ってる?そいつの事を?」
「おう、たまに僕のそばに居て彩が最初に僕を拉致った時にも会ってる」
「拉致った時って…ああ!!」


んで、もちろん行ったさ、次の木曜日、あいつが言った道場とやらに、
たまに物凄い気合が聞こえてくるが、思いの外道場は和気あいあいとしていてみんな楽しそうだった。
「…すげー」
…世の中こういう格闘家って本当に居るんだ、というのが素直な感想だったね。
確かその日はそこの道場の支部長の先生にマンツーマンで色々教えてもらった。確か、こんな体の硬くて運動音痴な僕でも少林寺拳法は出来ると先生は言ってくれた気がする。
それから毎週通ったね、軽く筋肉痛にもなった事もあった。仲間も出来た。
学校では相変わらずだったが、我ながら少し元気になった気がする。
本当に少しだったが、夜もぐっすり寝るようになって、夢くらいは見るようになった。友達を持つのも悪くないと思いつつあった。
ちなみに、あいつは物凄いうまかった、まさに先頭民族、ちまたで少林少女と呼ばれるのも納得だ。
彼女は県大会で優勝したりもしていた、僕も大会に出たりした、グダグダだけど正直楽しかった。

僕は彼女の笑顔もいっぱい見た。

僕ははっきり言って、それでも殆ど笑顔を見せなかった、もちろんあの子にも、それでも半月に一回くらいは笑顔を見せてたと思う。
今みたいに思いっきりではなかったが、おそらくこれがあったから今の僕があるのだと思う。

…もしかしたら、これがなかったら、ナギたんに出会う事もなかったかもしれないし、出会ってもすぐ別れたかもね。


「…それから半年後くらいに例の夢を見て、ナギたんに出会って、一緒にゲームして、遊びまくって、こっそり少林寺も続けて、今に至る。はい、昔のせーなたんの話はこれでおしまいっ」
「…ほえ~…」
なんかナギたんが放心してる。
「…なんか、凄い話を聞いた気がする」
「ぷっ」
ナギたんがあんまり真剣な顔で言うから思わず吹いてしまった。
「…お前は、今こうやって毎日笑ってるから昔からこうだと思ってた」
「ナギたんと最初に会ったときも無愛想だったでしょ?あれと一緒だよ」
ナギたんは「そう…か…」と、凄い思い老けた様子だった。なんか変な事言ったかな。
「…少女よ、何を悩む、我でよければ相談に乗るぞよ。」
「ぷっ!なんだよそれ!くくっ」
そういうとナギたんは大きな声を上げて笑い出した、可愛い、つられて僕も笑ってしまった。
「へへ、あのね、僕がいつも笑顔なのはやっぱナギたんのおかげだよ、ありがとね」
「ふぇ?私?」
「そ、あの時ナギたんに出会えてから毎日楽しいもん、もちろん今の話のもあるけど、あれからずっとナギたんが居てくれたから今僕が笑顔で居られる。ありがと」
「そ、そういう風に言われると照れるな…へへ…」
このときの恥ずかしそうに下を向きながら笑うナギたんは非常に可愛くて、思わず押し倒した頭を撫でてあげた。
「いつまでも子供扱いするな、わんわん」
わんわんってなんやねん。
「ふふん、これからもずっと一緒に居てね、ナギたん」
「え?んー…」
「何故そこで悩む」
「へへ、冗談だ、これからもよろしくな!」
「おう!」



僕らの記録は、これからも続いていく、もっと笑顔を貰ったりあげたりして、もっといろんな人に出会うかもしれない、もっと楽しくなるかもしれない、
辛いこともあるかもしれない、泣きたいときもあるかもしれない、でも絶対乗り越えてみせる。
2人なら、いや、僕らなら、彩も斬矢もあいつも、神無やトロイも巻き込んで、僕はみんな笑顔で、楽しく生きたいんだ…


そう、僕らの日記はこれからも続いてくんだ






…公立高校入試まで約1ヶ月、頑張らないとな、この子への恩返しと、この子の為にも、あいつへもな。
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Author:セーナ
妄想日記書いたりオリキャラのイラスト描いたりしてる。




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